【氷の微笑】#4 美女の微笑みに騙されてはいけない!
CDプレーヤーから音楽が流れている。夜の雰囲気を壊さないようにボリュームを落としながら。
情熱的に裸の男女が抱き合っている。あっちが離れたと思えば、こちらがくっつき、二頭の蛇のように境目をなくしている。糸が引くような粘っこさで二人の体が離れる。男の上に女がまたがる。男の上で、女は激しくなめらかに腰を振る。そのまま女は倒れ込み、男の首筋に吸い付く。男と接地面を増やすために腕全体で男の体をなぞる。その間も、腰は波打っている。ドラッグもキめて、頂点に達するのは時間の問題。
男を煽るように体をなぞりながら、女は男の腕を彼の頭の向こうへやる。ベッドのヘッドレールに手を近づけ、真っ白いスカーフを取り出す。そのまま、ヘッドレールと男の手を縛る。一つのSMプレイのようであり、男は興奮した。両者は絶頂に向かってますます高まっていく。
女の腰の動きが速くなる。男の突き上げる腰の動きも速くなる。感覚だけに両者の存在が集約される。空気の粒が泡立つ。高まっていく。絶頂に達したまさにその瞬間、
女はアイスピックで何度も何度も男を刺す!
翌日、発見されたのは性行為中にアイスピックで滅多刺しにされた男の死体でした。
傾国の美女。ファムファタール。昔から、世界の国々には美しい女性を例えた言葉があります。傾国の美女とは、その女の美しさを国が傾くほどである、という様子を例えたもの。ファムファタールとはフランス語で魔性の女、という意味があります。往々にして男を虜にし、滅茶苦茶にしてしまうほどの美しさを持つと言われます。
『氷の微笑』でも、そんな女性が登場します。
この女性が、とにかくエロい。まあエロい。私は映画を最初に観たのですが、ファムファタールであるキャサリン・トラメル役のシャロン・ストーンに目を奪われました。当時小学四年生だった私は、つるかめ算なんかやってる暇ねぇ、と宿題を放り投げました。
男性にある普遍的な願いとして、「絶世の美女に抱かれる」というものがある。死ぬ代わりに、人も羨む美しさを持った女性とセックスができる。
究極的な命題ではありますが、自分だったら絶世の美女に抱かれることを選ぶかもしれません・・・・・・。たとえ、アイスピックで滅多刺しにされたとしても。
小説、映画共にありますが、やっぱり映像の方がインパクトはあります。シャロンストーンの身体の曲線は、小説では観ることができません・・・・・・。